ニラの鮮度保持技術の開発
徳田正樹 ・廣瀬正純* *
Development of Freshness Keeping Method for Chinese Chive
Masaki TOKUDA*・Masazumi HIROSE*
Food Industry Division *
要 旨
高温期におけるニラの収穫後の品質保持期間を延長することを目的として,ニラの品質劣化状況について検
討を行った.
JA での真空予冷(以下 VC)処理では,品温は 15 ℃程度までしか低下せず,その後の冷蔵により 7 ℃程度 まで低下した.その後は,徐々に温度が上昇し,市場では18℃程度であった.市場までの輸送時間の50%に
あたる 22時間で 15 ℃以上の状態に置かれていた.そのうち 20℃以上の状態が,全体の 25 %にあたる 11時
間であった.貯蔵試験の結果,減量率は30 ℃で大きく,貯蔵 1日でもしおれが見られた.鮮度は,30 ℃では
3日,20℃では6日が商品限界であった.3~4日目までは10,15℃ともに差がほとんどなかったが,これを
超えると差が大きくなった.黄化の発生は,20℃では4日目,15 ℃では5日目,10℃では8日目から目立ち
始めた.腐敗の発生は,20℃では 4日目,15℃では6日目,10℃では8日目に確認された.貯蔵温度20,30
℃では貯蔵初期から鮮度低下が著しく,15℃では 3~4日目までは 10℃と大差ないものの,それを超えると
差が大きくなった.6hr以上高温下(30 ℃)に置かれたものの鮮度低下が,1~ 2日早くなる傾向が見られた.
1. はじめに
大分県は,高知県や宮崎県と並び,西日本を代表する
ニラの産地であり,大分市や佐伯市を主産地に2,600t余
りを県内,九州,関西方面へ出荷している.しかし,輸
送距離の長い関西方面への出荷では,特に高温期におけ
る品質低下が大きな問題となっている.
そこで,高温期におけるニラの収穫後の品質保持期間
を延長することを目的として,ニラの品質劣化状況につ
いて検討を行った.
2. 実験方法
2.1 供試材料
大分県農業協同組合大分市地域本部戸次選果場(以下
選果場)で通常出荷用に包装されたものを試料として使
用した.
2.2 輸送試験
選果場にて記録計(おんどとり RTR-53A:T&D 社製,
サーモクロン G:KN ラボラトリーズ社製,HOBO デー
タロガー:オンセット社製)を設置し,通常の経路にて
大阪中央青果まで輸送を行い,輸送中の環境温度と品温
を測定した.
2.3 貯蔵試験
選果場にて入手した試料を,10,15,20,30 ℃のイ
ンキュベータ内で8日間貯蔵し,減量率,鮮度,葉の黄
化,腐敗について各3束ずつ調査した.鮮度は外観によ
り 5:収穫時の鮮度,4:少し鮮度が低下,3:明らかに
鮮度が低下,2:商品性限界,1:商品性なしの5段階で
評価した.葉の黄化,腐敗については,発生本数を調査
してそれぞれの割合で示した.
2.4 高温負荷試験
選果場で入手した試料を,高温下(30℃)に2,4,6,
24hr貯蔵後,さらに 10℃のインキュベータ内で 8日間
貯蔵し,減量率,鮮度,ビタミン C 含量,糖含量につ
いて各3束ずつ調査した.ビタミンC含量は,5%メタ
リン酸で抽出し,HPLCで測定した.糖含量はF-キット
にて測定した.
3. 試験結果および考察
3.1 輸送試験
市場までの流通温度の推移を Fig.1に示した.JA で
の VC 処理では,品温は 15 ℃程度までしか低下せず,
その後の冷蔵により7℃程度まで低下した.その後は,
平成20年度 研究報告 大分県産業科学技術センター
徐々に温度が上昇し,市場では18℃程度であった.
また,市場までの各温度帯での経過時間について調査
した結果をFig.2に示した.全体の 50%にあたる 22時
間で 15 ℃以上の状態に置かれていることがわかった.
そのうち 20℃以上の状態が,全体の 25 %にあたる 11
時間になっていた.このことから,ニラの輸送において
コールドチェーンが十分には機能していないことがわか
った.JA でのVC 処理の効果はほとんど見られず,VC
処理後の冷蔵により品温を低下させているという状況で
あった.今後,VC 処理の条件や必要性についての検証
が必要であると考えられる.
3.2 貯蔵試験
貯蔵試験の結果,減量率は 30 ℃で大きく,貯蔵 1日
でもしおれが見られた.10,15,20 ℃では 3 日目まで
はほとんど差がなかったが,それ以降は差が大きくなっ
た(Fig.3).鮮度は,30℃では3日,20℃では 6日が
商品限界であった.15 ℃では 8 日目でも,かろうじて
商品性を維持していた.3~ 4 日目までは 10,15℃と
もに差がほとんどなかったが,これを超えると差が大き
くなった(Fig.4).黄化の発生は,20 ℃では 4 日目,
15℃では5日目,10℃では8日目から目立ち始めた
(Fig.5).腐敗の発生は,20 ℃では4日目,15℃では
6日目,10℃では8日目に確認された(Fig.6).貯蔵温
度20,30℃では貯蔵初期から鮮度低下が著しく,15℃
では3~4日目までは10℃と大差ないものの,それを
超えると鮮度の差が大きくなった.
以上のことから,輸送中は 15 ℃以下であれば鮮度低
下はある程度抑制できることがわかった.輸送前にでき
るだけ品温を低くし,輸送中の品温上昇を抑制すること
平成20年度 研究報告 大分県産業科学技術センター
により,鮮度低下を最小限にすることが可能になると考
えられる.
3.3 高温負荷試験
高温負荷試験の結果,6hr 以上高温(30℃)にさらさ
れたものの鮮度低下が,1~2日早くなる傾向が見られ
た(Fig.7).ビタミンC,糖含量については,明確な差
異は確認されなかったが,6hr 以上の高温負荷区で各成
分の減少が早い傾向が見られた(Fig.8,9).
今後,さらに詳細な検討は必要であるが,収穫後から
市場までの間,高温に置かれる時間を6hr以内に抑える
ことで,夏場の鮮度を1~2日延長できる可能性がある
ことがわかった.
4. まとめ
本研究により得られた知見は以下のとおりである.
(1)JA での VC 処理では,品温は 15 ℃程度までしか低
下せず,その後の冷蔵により 7 ℃程度まで低下した.
その後は,徐々に温度が上昇し,市場では18℃程度
であった.
(2)市場までの輸送時間の50%にあたる22時間で15℃
以上の状態に置かれていることがわかった.そのう
ち20℃以上の状態が,全体の25%にあたる11時間
になっていた.
(3)JAでのVC処理の効果はほとんど見られず,コール
ドチェーンが十分には機能していないことがわかっ
た.
(4)貯蔵試験の結果,減量率は30℃で大きく,貯蔵1日
でもしおれが見られた.
(5)鮮度は,30℃では3日,20℃では6日が商品限界で
あった.3~4日目までは10,15℃ともに差がほと
んどなかったが,これを超えると差が大きくなった.
(6)黄化の発生は,20℃では4日目,15℃では5日目,
10℃では8日目から目立ち始めた.
(7)腐敗の発生は,20℃では4日目,15℃では6日目,
10℃では8日目に確認された.
(8)貯蔵温度20,30℃では貯蔵初期から鮮度低下が著し
く,15℃では 3~4日目までは 10℃と大差ないも
のの,それを超えると鮮度の差が大きくなった.
(9)輸送中は15℃以下であれば鮮度低下はある程度抑制
できることがわかった.
(10)6hr 以上高温(30 ℃)にさらされたものの鮮度低
下が,1~2日早くなる傾向が見られた.
平成20年度 研究報告 大分県産業科学技術センター
なお,本試験を実施するにあたり,大分県農業協同組
合大分市地域本部,大分県大阪事務所,大分県農林水産
研究センター野菜・茶業研究所の関係各位には多大なご
協力を頂きました.ここに厚く御礼申し上げます.
平成20年度 研究報告 大分県産業科学技術センター